店長インタビュー

亀戸天神前の鰻といったらココ、「八べえ」

今回のインタビューの場所は?と聞いたところ、「亀戸天神前!」としか知らされず、住所もわからないまま蔵前通りを歩いて向かった。

亀戸天神の入り口、鳥居の左側に「八べえ」はある。

亀戸天神入口交差点に到着したところ、「八べえ」の看板が見えた。なるほど、住所を聞かずとも「亀戸天神前」で通じる場所なのだ。老舗「八べえ」はこの辺りでは有名な鰻屋だ。

早速、「八べえ」の山﨑店長にインタビューをお願いしてみた。

1980年、父親が亀戸で創業

「八べえ」店長の山﨑さん。鰻の話題になると話が尽きない。

「八べえ」の創業はいつですか?

私がこの業界に入ったのはだいぶ後の事ですが、創業は1980年(昭和55年)です。

私の父が江東区木場で筏師として材木関係の仕事をしておりましたが、昔からの夢であった飲食店をやりたいという思いがあり、場所をさがしていたところ仕事でよく訪れていた亀戸で勝負したいと思い、亀戸で創業しました。その時千葉県佐倉に住んでいた祖母を呼んで手伝ってもらいました。祖母が佐倉の菖蒲荘という鰻屋さんに勤めていたので今はもう使われていない技法の八べえ五右衛門蒸しという蒸し方で鰻を調理する方法を祖母から学び、この現代にはもうほとんど使われていない技法の焼き方で技を追求し続けております。

こだわり活鰻

新鮮で肉厚なブランド鰻を取り扱っている。

鰻の調理の仕方に「地焼」「蒸焼」とありますが、これは何ですか?

関東ではふっくら調理する「蒸焼」が主流ですが、関西では「地焼」といい、皮目がカリッとする香ばしさを楽しめます。最近は関東でも「地焼」が食べられようになりましたが、「八べえ」が初めた最初の頃はとても珍しかったと思います。

また、「蒸焼」の調理方法も様々で、八べえでは『八べえ五右衛門蒸し』という千葉県で昔行われていた調理方法を使っているのも特徴の一つです。

丁寧に捌かれた鰻は、炭火でじっくり焼かれる。

天然鰻の他にも、ブランド鰻も取り扱っているのですね。

天然鰻や、ブランド鰻を扱っています(現在は5種類)。

天然の鰻は主に旧江戸川や三重県伊勢市五十鈴川河口で獲れる鰻を使っています。そもそも「江戸前」という言葉は江戸時代に江戸で採れたの天然の鰻が美味しいと評判になり、「江戸前鰻」として知れ渡ったのが語源です。そのくらい昔からずっと変わらず評価されて食べられているものなんです。

また、ブランド鰻にも力を入れています。ブランド鰻はその特徴がすべて違うので、肉質が肉厚でうなぎのうまみがよくわかり、地焼きに向いている、または蒸しの方が適している等、鰻によりオススメの調理方法も変わってきます。それぞれの鰻の本当の味の違いを感じてもらえたらと思います。

他にも、日本国内の鰻屋さんで供給されている鰻の約10%程度しか存在しないと言われている「青うなぎ」も取り扱っております。生産者さんや鰻問屋さんの力をお借りして全国から集め提供しております。

ダチョウ、ワニ、カンガルー、ラクダ!?

見たことがないメニューがあるのですが・・・

たしかに「鰻丼」や「焼き鳥」、「海鮮丼」なんかのメニューと一緒に「ワニテールの天ぷら」、「カンガルーのタタキ」、「ラクダのステーキ」なんかがあったらビックリしますよね(笑)

最近は「レア肉」というキーワードで注目されていますね。私は15年くらい前に九州で見つけて、「コレはオモシロイ!」と思い「八べえ」でもはじめました。日本では馴染みのないレア食材ですが、海外では普通に食べられていますし、臭みもなく高タンパク質低カロリーなので、特に女性のお客さんに人気ですよ。

若いお客さんも多い

店内の壁には所狭しと著名人のサインや写真が飾られている。

芸能人のサインがいっぱいありますね!

実は芸能関係の方がお忍びでよく来られているようです(私は気が付かないのですが・・・)

ありがたいことに、テレビや雑誌で話題にしていただくことも多く大変感謝しております。「鰻」と聞くと「高級」というイメージがあるので年配のお客さんが多いように思われがちですが、うちは若いお客さんもたくさんご来店いただいております。

うなぎの身の出汁100%のスープを旨味を残して精製したスープで作る「鰻ラーメン」。

先程の「レア肉」もそうですが、少し前に開発した「鰻ラーメン」もネットやSNSが影響しているようです。私は、いわゆる一般的な鰻料理も当然ですが、「もっとたくさんのお客さんに来ていただきたい!」という思いがあり、新しいメニューを開発しています。これからも「八べえ」だからできるいろいろな挑戦をしたいと思っております。

格闘家も多く来店

プロレスリング・ノアからもらった「うなぎ」マスク。

飾ってあるプロレスのマスクはなんでしょう?

これはお客さんのプロレスリング・ノアの関係者からいただきました。マスクの柄をよく見ていただくと分かるのですが、「うなぎ」のマスクなんです。

私自身が若い頃、柔道や空手、キックボクシングをやっていたことがあるからなのかわかりませんが、格闘家のお客さんも多くご来店いただいております。さすがにこの仕事を初めてからは、自分が道場に通う時間がないのでまた格闘技をするのは難しいですけれども(笑)

本当にたくさんのお客さんに支えられて「八べえ」があると思っています。いつまでも美味しい鰻、新しい挑戦をし続けたいと思います!

インタビューを終えて

いかがでしたでしょうか?

ずっと昔から亀戸天神前にある鰻屋の老舗という看板と、山﨑店長の人柄新しいことへの飽くなき挑戦がこの「八べえ」というお店なのだと思いました。厳しいと言われる飲食業界で生き残る術がここにあります。

亀戸天神前にあるいつもの美味しい鰻と、ただの鰻料理だけでは終わらない「八べえ」だけが提供できる創意工夫は、これからもずっと年代を問わずたくさんのお客さんを楽しませることでしょう。